協会誌 vol.24-25より

2017年 力を抜いて生きる

和らかい心と柔らかな体をつくる サウンドヒーリング
サウンドヒーリング協会理事長 喜田 圭一郎
ハワイ

地球から37光年先に位置する うしかい座の一等星「アークトールス」はハワイ語で「ホクレア」と呼ばれ、「幸せの星」という意味を持っているそうです。 1,000年以上前からポリネシアの人々はこの夜空に美しく輝く「アークトールス」を始めとする星、月、太陽、風、海のうねりなど自然のサインを道しるべとして、太平洋を航海する「古代ポリネシアン航海法」を発達させていたようです。 コロンブスが羅針盤を使って大西洋を横断する何世紀も前から、ポリネシアの人々は機器や海図も使わず、太平洋上にあるポリネシアン・トライアングルと呼ばれる広大な海域の島々を往来していたのだそうです。

ハワイにもポリネシアから偶然たどりついたのではなく、そこに島があると意図して何千キロも航海して移住したと言われています。GPSや機器を使って航路を決め、限りある資源の化石燃料を燃やしエンジンの力で大きな鉄の船を動かす現代の航海とは違い、小さな木のカヌーで風の力だけを利用して船を動かし、星や太陽など自然からのサインを感じながら方位を決めて航海する古代のポリネシアの人々の航海方法は、これからの不透明で従来の常識が通用しない時代を生き抜く上でのヒントがあるような気がします。

1975年にアメリカ合衆国建国200周年記念事業の一つとして、ハワイで1艘の古代の外洋航海カヌーが復元され、その船に「ホクレア」という名前が付けられました。 全長約19メートル、船体が二つある双胴船で、帆をはって風を受けて進む小さな外洋船です。 古代ポリネシアン航海法を証明する考古学的な実験のための大きな意味をもった船とも言われたようです。 ミクロネシアには今でも、風や波を感じ、海洋生物と語り合う伝統的な航海術が残されています。 ミクロネシア、サワタル島の伝統的マスター航法士マウ・ピアイルックが参加し、1976年ホクレア号はハワイからタヒチ3,000kmの航海を古代の航海術「スターナビゲーション」だけを使って長い航海を成功させ、古代の人の叡智を証明しました。ホクレア号は自然を敬い、自然と調和して生きる新しい人間象の象徴として、今も世界の海を航海しています。2007年には日本にも古代の航海術(船長ナイノア・トンプソン)で訪れ、沖縄、広島、山口など、ハワイの日本人の出身県の地域8か所を帰港しています。映画ガイアシンフォニーでも紹介され、記憶に残っている方もいる事でしょう。

ハワイの伝統文化継承者ダニエル・アカカ(Daniel Akaka Jr.)さんはこのホクレア号に乗船し、日本への航海にもクルーとして参加しています。アカカさんには今年からサウンドヒーリング協会のアドバイザリーブレインに加わって頂くことになりました。昨年12月ハワイ島にてアカカさんと再会し、ホクレア号の話題を含め、今の時代を生きる私たちにとって大切なこと、思い出すべき点について伺いました。

アカカさんはハワイの王室を支えてきた聖なる家系ですが、ホクレア号のクルーとして乗船する時のアカカさんのミッションは、カヌーに感謝の祈りを捧げ、クルーメンバー全員の調和、海、空、星々など自然のすべてに大調和の祈りを捧げることでした。

しかしそれは、海が荒れることを恐れ航海の無事を願う祈りではなく、自然と共に航海し自然を信じ切る心、自分を信じる心、仲間を疑わずに信じる心に基づく、静かで柔らかい、しかし強い信念に似た祈りの心のように思いました。アカカさんはその“大調和を意図する心”がこれからの時代にとても大切だと話され、人は一人ではなく常に自然と共に、人と共に生きている、全てが調和し良くなる、深い神聖なる精神からの祈りは自分を信じる生き方となり、誰もが意識すべき心のあり方と話されています。

またカヌーは単なる物ではなく、手で触れ感謝の心を言葉にして伝えることで安全な航海のできる「生命」を宿したカヌーになっていくそうです。釘は使わず紐だけで40年前につくられたカヌーですが、沢山の人の手と思いやりが込められ、細かいところに工夫がなされた快適な船だそうです。それは海の上に出ると、安心感のあるとても居心地よい船になり、荒波を船の「力」で頑張って進むというより、風や波や星や月などまわりの全ての自然と調和して、海に守られ、海に運ばれながら快適な航海をする柔らかで、しなやか体を備えた船になっていくそうです。

私も自分が毎日使っている体感音響の機器やパソコン、車などに手で触れ、感謝の言葉を心の中で伝えると長持ちし、いざという時に故障せず、自分と一体化したモノになることを経験し、会員の皆様にもお勧めしていますが、改めて自分の生活を支えてくれているすべての物、仕事上で必要なものに手で触れ、感謝の心を伝えることで、自分の回りの環境をも快適にすることができる事を思い出しました。

アカカさんは船に乗っている時以外でも聖なる言葉の力を使ったチャンティング(Voice Pray)を様々なところで行い、神聖なる精神で生きることを人々に伝える仕事をされています。アカカさんのオフィスはハワイの王室が王位継承の儀式を行なったマウナラニ(天国に手が届く丘)にあります。

お会いしたその日は丁度、H航空のコナと羽田を結ぶ新しい路線の初フライトに招待されているそうで、往復のフライトでは新路線の飛行機に手で触れ感謝の言葉を伝え、空や海や星々など運行中の自然のすべてに感謝の心を伝え、乗務員とお客様の安全を祈るミッションを航空会社から依頼されているとの事でした。この大切なミッションにより、不安な心や不調和な状況が発端となる事故や故障を未然に防ぎ、最新鋭の飛行機に生命を吹き込み、全てがスムーズに運ぶ調和した路線になっていくそうです。現代においては不思議に思えることかも知れませんが、ハワイのアロハスピリットから生まれるこの物を扱う精神とそれに基づく行為は私たち日本人の中にも古くから流れている、忘れてはならない大切な精神だと思います。

サウンドヒーリン協会の体感音響の実技もこの精神を大切にし、その精神を形に表す行為です。昔の武道の武術法と同じく、あまり大きく体は動かさずに、小さな動作で大きな結果を生み出す、心と体の動作が一体化した動き(Meditation in Motion)です。力で相手の体を動かすのではなく、力を抜き、和らかい心と柔らかな体で、腰(丹田)を中心とした静かな動作です。心の中で唱える言葉と手で相手の方の体と生命に感謝を伝える訓練を継続することで、体感音響機器がもし手元になくても、いざという時にどこでも、人の心と体をケアできる優れた方法です。私自身この方法を50年近く前に学び、自身と家族の健康に役立ててきました。

そして自分の環境に調和をもたらす3つの方法The Art of Harmonic Revolution(自然音、体感音響、呼吸と声)は自分の外(社会)への変革を求めるものではなく、自分の内側への変革をもたらし、自分の存在や生き方を通して自然と自分の回りに大調和の変革を生み出す方法です。

心理学者のロベルト・アサジオリは「人間は自分と他人に影響を与える力を授かった“生物”である」と述べ、「良い方にも悪いほうにも自分自身が人にも自分にも影響を与えている」ことに気づくことが大切だと述べています。その気づきは自己の内面に存在する新鮮で限りない力を発揮する基礎になるとも述べています。

2017年は変化の年、進化の年といわれています。専門家の方々も何が起きてもおかしくない、何が起きるか分からない予測不可能な時代になったと述べています。長い地球の歴史、人類の歴史の中でも大きな大変革の始まりなのかも知れません。しっかりと、何が起きても大丈夫の精神をサウンドヒーリングの自然音、体感音響実技、呼吸と言葉を通して培っていきたいと思います。和らかい心の力と柔らかな体で未来を切り開いていく時代です。
大地に足をつけ、自然からのサインをしっかりキャッチしながら、前に向いて進んでいきましょう。

皆様一緒に前に進みませんか。

富士山

協会誌vol.33-34

サウンドヒーリング協会の協会誌2022年版(vol.33-34)が発行されました。

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